梅雨の花かな・・・

あぢさゐの
八重咲くごとく
やつ代にを
いませ我が背子
見つつ思ばむ

橘諸兄

 

あぢさゐの
やへさくごとく
やつよにを
いませわがせこ
みつつしのばむ

たちばなのもろえ

 

紫陽花が八重に咲くように いつまでも栄えますように
この花を見るたびに貴方様を思います

 

 

昔々今から遠い天平の頃、
ある宴会でその館の主のために詠まれた歌だそうです。

 

橘諸兄、本名は葛城王・・・
あれっどこかで聞いたような覚えが・・・

 

・・・何だかまずい政治の匂いが・・・

 

だいたい天平って奈良時代のはじめ、聖武天皇の時代・・・

ああ何だかいろいろありそう・・・

これは・・・

 

などと考えたらやっぱりそうでした。

 

皇族から臣籍に降っているのですから当然身分は高く、
興隆する藤原氏の娘さんが、まあ今の言葉で表現すれば奥方のひとりでもあり、
けっこうなお力をふるっていたのですが・・・

簡単に言えば台頭する藤原一族の影響力がより大きくなって、
政治家としての力は失墜したようです。

代が変わって後年には、息子のひとりが橘奈良麻呂の変とも呼ばれる、
対立者から見ればいわば騒乱をひき起こそうとして、
結果流罪になったとも獄につながれたとも言われているそうです。

 

藤原氏は奈良時代にも勢力があった・・・。

 

紫陽花の綺麗な花とは似ても似つかない怖い怖いことになっていくのですね。

 

「あじさい」古代はガクアジサイしかなかったようです。

時間をかけて品種が改良されて色鮮やかな姿になっていったのでしょうか。

ですが和歌で好まれた題材ではなかったらしく、
平安時代の終わりぐらいまであまり詠まれていません。

 

土壌によって色が変化するその性質が、どうも心変わりとか、不誠実とか、
あるいは変節などを連想させて、縁起が良くない(?)と思われていたみたいです。

 

別に植物には罪はないのになとも思います。
綺麗な花だから庭などに植えられて観賞されてはいたのでしょうが。

 

紫陽花といったらいかにも梅雨の頃の花という感じで、
雨に降られて露が降りている様子などを思い浮かべます。

花の色が土によって変わるので、例えば白い紫陽花などは
そう多くは見かけない印象です。

思うような色にならないのがまた魅力なのかもしれませんね。

 

それに日本の気候によく合っているらしく丈夫なのも良いところです。

花は美しいけれども全体としては力強く、
たくましい植物という印象も与えてくれます。

 

現在はあまり見かけなくなったカタツムリなんかが
葉っぱの裏に生息していたときもありました・・・。

 

紫陽花は環境によって確かに色が変化します。

なんとなく時代の移り変わりや人間の運命も思わせますね。

 

古い時代はともかく、現代の歌では詠みやすい花ではないかとも思えます。

 

紫陽花 あじさい・・・
移り変わりの象徴かな

 

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